【乱視矯正手術】有水晶体眼内レンズについて
乱視を矯正する手術のひとつに、有水晶体眼内レンズというのがあります眼の中にコンタクトレンズのようなものを入れて乱視を矯正する手術です。
現在使われている有水晶体眼内レンズにはいくつか種類があります。有水晶体眼内レンズとはいったいどのようなものなのか、手術方法も含めてここで紹介します。
有水晶体眼内レンズとは
有水晶体眼内レンズ(「フェイキックIOL」とも呼ばれます)は、眼の中にレンズを埋め込むことで、近視や乱視の矯正をするものです。
眼内レンズといえば一般的に白内障手術で使われるものをいいますが、白内障手術が水晶体を取り除いた部分にレンズを挿入するのに対し、有水晶体眼内レンズは、文字通り患者の水晶体を残したまま、乱視矯正用のレンズを眼内に挿入します。
一般的な乱視である正乱視の眼では、レンズの縦軸と横軸とで屈折力が異なり、2つの焦点を結びます。ここに、縦軸もしくは横軸のみ、焦点を移動させるレンズを挿入し、2つの焦点を1つにすることで乱視を矯正します。手術では眼の表面を小さく切開し、そこから小さく折りたたんだ眼内レンズを挿入します。その後、挿入したレンズが目の中で回転しないように固定します。固定の方法は使うレンズの種類によって異なります。
有水晶体レンズが適応する乱視は?
乱視には、大きく分けて「正乱視」と「不正乱視」がありますが、適応するのは正乱視で-7.00D以下の度数となります。
不正乱視の適応については、一定の条件が揃えば効果が期待できる場合もありますが、手術できない、あるいはできたとしても慎重を要する手術となります。
有水晶体眼内レンズの種類について
私たちの眼は、表面から順に角膜、虹彩、水晶体・・・といったパーツが並んでいます。虹彩とは、黒眼の外側の、色がついている部分です。
この3つのパーツのどの部分にレンズを挿入するかでレンズの種類が異なりますが、厚生労働省が認可しているのは、後房型のレンズとなります。
後房型有水晶体眼内レンズ
後房型のレンズは、虹彩と水晶体の間に挿入するもので、現在の主流となっています。
以前は術後に白内障の発生が危惧されていましたが、現在では大きく改善されています。
有水晶体眼内レンズ手術の流れ
それでは実際に眼内レンズの適応となった場合、どのように手術が進められるのか紹介します。
まず適応検査を実施し、レンズを取り寄せます。手術当日は以下の流れで手術は進みます。
1.瞳孔を拡大させる
手術当日、まず準備として、瞳孔を広げる薬と麻酔の点眼薬を点します。
2.角膜の縁を切開
次に、レンズを挿入するために角膜周辺部を小さく切開します。切開創は3.2mm、レンズの種類によっては5.5〜6.5mmと、やや大きい場合があります。麻酔が効いているので痛みは感じません。
3.眼内レンズを入れる
眼内レンズを折りたたみ、切開部分からレンズを眼内に入れます。レンズは目の中で再び広がります。
4.眼内レンズを固定する
後房型のレンズは虹彩の後ろにある毛様溝とよばれる部分にレンズの両端を差し込むことで固定します。
手術時間と術後のダウンタイム
手術そのものにかかる時間は20〜30分ですが、当日の車の運転はできません。運転に関してはいつから可能か、手術を行った施設で確認してください。
また治療後の視力は、手術の傷口の回復に伴い、一般的に48時間程で回復しますが、眼をこするなどの行為は当面は避けてください。
入浴や化粧ができるようになるまでの期間にも制約がありますので、担当医から詳しく聞くようにしましょう。
有水晶体眼内レンズ手術の利点
ここまで有水晶体眼内レンズについて紹介してきました。有水晶体眼内レンズは、他の手術が必要になったときなどに、取り外して元の状態に戻すことができる利点があります。
レンズの種類も色々ありますので、手術を検討する際には、自分にはどのようなレンズがよいのか医師と相談するとよいでしょう。
【参照】
著者:所敬、2014年『屈折異常とその矯正』、金原出版
編集:所敬/大野京子、2012年『近視 基礎と臨床』、金原出版
全日本病院出版会、2015年『OCLISTA No.29』
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